絶対恋度

「うー…………っす?」

「げ」

現れた男を見て、せっかく絃葉とお酒のおかげで良い感じに盛り上がった気分が一瞬でぱりんと割れた。

「げ、てなんだよ。失礼だな」

低く、地面にひびくような深い低音ボイス。 彼はすこし首を傾げながら「奥行けよ」と、わたしを押しやると、ルーズなシルエットの黒いスウェットを揺らしてわたしの隣に腰を下ろした。

モデルのような長い手足を持て余すように折り曲げる仕草さえ、絵になってしまう。

久しぶりに嗅ぐあまったるい香り。気まずい気持ちを押し殺して隣を見遣る。

何度見ても、この男の顔面偏差値はバグっていると思う。

すこし長めの毛足を無造作に遊ばせたアッシュの髪。前髪の隙間からのぞくのは、鋭いけれどどこか眠たげな、三白眼の瞳。スッと通った高い鼻筋から、少し厚みのある艶やかなくちびるにかけてのEラインは、まるでかみさまが時間をかけて丁寧に完成させた彫刻のようで、無機質なうつくしさを放っている。

「絃葉、なんで燈埜まで呼んだのよ」

「元々燈埜と飲む予定だったわけ。燈埜のおごりなのに来ないから焦ったわ〜」

奢りって、絃葉じゃないのか……!

愕然としながら、やっぱり絃葉はいじわるだと再確認する。だって、そうなら、最初から言って欲しかった。



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