絶対恋度
諦めたように項垂れるわたしの隣で燈埜は頬杖をついたまま「ふうん」とひと言うなずき、こう言った。

「じゃあ俺ん家来る?」

「え?」

頭上に句読点がならぶ。わたしだけがおかしいのか。燈埜の横顔はどこまでも日常で、絃葉もまた「ひゅ〜」と、はやし立てている。

「流れ的にそんな感じだったじゃん」

「え、いやいやいや、さすがに燈埜の家は……」

駄目だとわたしの中の理性、というか一般常識が言っている。高校生の頃からの知人とはいえ、燈埜は、ある意味絃葉よりもわたしのことを知っている。知られている。……どう考えても不可能だ。

「家っつうかオフィス兼スタジオだから、女が増えたところで誰も何も言わねえし、いまさら、ねえ?」

しかし、燈埜は意図のある視線をよこす。まるで不可能を可能にする呪文みたいだ。絃葉に視線を移しても、彼はスマホを触っているだけだし、そもそも、絃葉に助言を仰ぐのは失礼だ。

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