絶対恋度
私のことをセレブだと揶揄う燈埜こそ本物の富裕層だ。なぜなら彼の両親は俳優で、ひとり息子の高校生活の為に高層マンションを買うなど、一般人とはまるで財力が違う。

「ちなみに今日はそんな燈埜の納期明けの飲み。燈埜もどうせ寝てたんだろ」

絃葉の説明に、燈埜は「寝てた」と頷いた。燈埜は映像関係の会社を立ち上げ、今では社長だと絃葉経由で知った。

「住むなら連れて帰るけど、どうする」

再度、催促される。いまから2軒目いく?かのような温度で、日常の延長線のように。緊張しているわたしが馬鹿みたいに。

「え……と、いいの?」

おずおずと隣を見上げる。

「いいよ。タダで住むのは自分のプライドが許さないなら、うちの会社の経理とテロップチェック手伝って。それを家賃代わりにしてくれたらいいよ」

なるほど、それならわたしも納得できる。

「燈埜が全部自分でしてるの?」

「まあ、その辺まで雇用したとして、俺が管理できる自信がないから」

「経理なんてわたしに任せていいの〜?」

揶揄すれば、燈埜は一蹴した。

「桜雪は不正しないだろ。まあ、したとして桜雪なら許すよ」

「ん?」

いま、さらっと何か言わなかった?

でも、彼が差し出してくれた救いの手は、今の私にとって唯一の希望だったし、なにより眠そうに欠伸を噛み殺す燈埜の様子から、わたしのことを微塵も意識していないことが伺えた。

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