絶対恋度
シャワーを浴び終え、用意していた服に袖を通す。浴室を出てすぐの場所に燈埜は凭れていた。
「ごめん、シャワー待ち?」
「桜雪待ち」
「え?」
燈埜は意味ありげな言葉を残すと、ふたたび歩き始めた。
「水、飲む?」
「うん。飲むー……」
ペットボトルの飲料水をありがたく頂戴する。起床直後から、喉が乾いて仕方なかったのだ。
「作業部屋以外だったら自由に行き来していいし、家のものは勝手に使っていいから。あっちは書斎で、向こうがジム」
「この家、何部屋あるの?」
「ちゃんと数えた事ない」
「そう……」
相変わらず、生活感がないなあ……。
これは昔から。ことさら食生活に関して燈埜は最悪だ。生活感の欠落した無機質な部屋。ゴミ箱に捨てられたゼリー飲料の殻。あの頃と全然変わってない気がする。
「燈埜、ちゃんと食べてるの?」
「一応」
「一応、ねえ」
人間らしい食事はしている、の略だろうか。
「ここ、一階にコンビニあったよね?ちょっと買い出し行ってくる」
「俺も行く」
「一人で行けるよ」
燈埜は欠伸を噛み殺しながら玄関へ向かった。わたしが駄目だと言っても、一緒に行くつもりらしい。