絶対恋度
けれど、こっちも引き下がれない。こんなぐちゃぐちゃな気持ちを抱えたままホテルに泊まっても、ぐっすり眠れるはずがないのだ。

「無理、今のわたしには絃葉しかいないの。お願い!」

「はあ?」

絃葉はいつも通りで、私だけが日常とは切り離されている感覚。それらが不安を後押しし、たまらず、ぐすん、と鼻をすすった。あ、まずい。これはだめなやつだ。

「ごめん、やっぱなんでもない。ひとりで何とかする」

そう言って切ろうとした途端、絃葉は「まて」とストップをかけた。

「もう焼きとんとタコから頼んだわ。冷める前に早く来い」

絃葉は勝手に通話を終わらせると、メッセージで位置情報を送ってくれた。冷たくてもこんなところがあるから絃葉は憎めないのだ。


「おねがい!何でもするから今夜だけ泊めて!」

言われて駆けつけた居酒屋に、絃葉はひとりだった。誰かと飲んでいる様子でもなく、四人用らしい個室のテーブルは絃葉の周りだけで完結している。

「え……無理」

食い気味に拒絶され、絶望に肩を落とした。
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