婚約破棄の断罪裁判を開いた王太子、証言で全て自分の首を絞める【短編】
二人目。
教会の聖騎士が緊張した面持ちで王太子の側にやって来た。
彼は少々ばつが悪い様子で、侯爵令嬢への視線を逸らし続けていた。
シャルロッテの顔が再び曇る。
この聖騎士とも、顔見知りだったからだ。
彼女は教会の奉仕活動に熱心で、彼に護衛をしてもらったことが何度もあった。共に貧しい子供たちとの炊き出しをしたこともあった。
そんな彼が、王太子側に立っているなんて……。
「シャルロッテは、ローゼに暴力を振るったのだな?」と、エドゥアルトが得意げな顔で尋ねる。
聖騎士は深く頷いて、
「はい。侯爵令嬢は『レディが騎士に触れるのは慎むべきです』とおっしゃって、私から男爵令嬢を引き剥がしました」
聖騎士は大事な任務で大聖堂へ向かう前だった。そこへ男爵令嬢が抱きついて、行く手を阻んだのだ。
彼は王子様の如き甘いマスクで有名で、男爵令嬢も前々から狙っていた。その日も、腕を絡めてしつこく付き纏っていた。
彼が困っていると、彼女は「殿下のことは気にしないで♡」と言って、ベタベタとくっつきまくる。王太子の名を出されて、彼は身じろぎ一つできなかった。
聖騎士は教会に属しており、神聖な儀式の前は女人が触れてはいけないという戒律がある。
だから、男爵令嬢と触れれば身を清めなければならないが、もう予定の時間が迫っていた。
そのとき、他の聖騎士から助けを求められたシャルロッテがやって来た。
彼女はローゼを咎めたが、全く言う事を聞かない。なので強硬手段に出たのだ。
「痛い痛い痛い痛いーっ!」
シャルロッテはローゼの腕を強く掴んで、引っ張った。
その際にバランスを崩し、ローゼは転んで怪我をしてしまったのだ。
「――このように、シャルロッテはローゼに暴力を振るって怪我をさせたのです。高位貴族の身分を笠に着て、なんたる横暴でしょうか!」
「……次」
国王は息子に返事もせずに、次の証人を促す。
貴族たちのほうからヒソヒソと囁き声が漏れ出す。