両思いでしたがタイムトリップして、敵国の王子と王女になりました!?
え、魔法!?
 次に、目を覚ました時。
 私の前には、連くんがいた。

「美亜、平気?」
「あ……、うん!」

 連くんの姿を見て、ホッとする。
 小学生じゃない、二十歳のレン王子だったから。

「本当に、来れたんだね。異世界に」
「うん! やっぱり神様はいるのかな?」
「お願いを叶えてくれたし、居るんだよ。きっと」

 それに、神様がいてくれるなら心強い――
 そう思って、希望を抱いたのだけど。
 連くんは「う~ん」と、渋い顔をして腕を組んだ。

「美亜の話も聞いて、俺も心の中で”神様あて”に色々言ってみたんだけど……。
 ダメだね。
 うんともすんとも言わないや」
「え、神様に色々言ってみたの?
 何を?」

「……」
「連くん?」

 少し無言になった連くんは、話を逸らした。
「それにしても、ここはどこかな?」なんて、わざとらしく。

「あの、連くん?
 もしかして、私に言えないようなお願い事?」

 だったら、かなり気になるんだけど!
 すると連くんは、少しずつ顔を赤くして……
 なんと、コクリと頷いた。
 そして、何を言うかと思えば。

「むしろ美亜にだから、言えないような事……だよ」
「え!?」

 そんな意味深なことを言われると、ますます気になるー!
 だけど、忘れてはいけない人物が、もう一人。
 それは、連くんの手の中から声を出した。

「だー! もう!
 イチャイチャするな!
 こっちは傷心中なんだっての!
 ちょっとは気を遣ってよ! 特にミア!!」
「はい! すみません、ネネちゃん!」

 いつもの妖精サイズに戻ったネネちゃんが、勢いよく手の中から飛び出してきた。
 すごい顔で、私を見降ろしてる……!

 かと思えば「で?」と。
 わざと空気を変えるような、明るい声色を出す。

「あそこにいるのは誰?」

「へ?」
「あ、本当だ」

 ネネちゃんが指さす先に、その人はいた。
 まるで、小学生の私達と同じくらいの身長。
 丸い大きなメガネに、長いフード付きのマントを被っている。
 髪はボブくらいある。
 じゃあ、女の子かな?
 それにしても……。
 えっと、どちら様?

「あの、どうしたの? 迷子?」
「……」

 メガネの奥の瞳と、視線があった。
 すぐに逸らされたけど。

「どうしたのかな?
 見たところ、迷子だよね?」
「いや、迷子っていうか……。
 ここって、荒野じゃない?
 家も人も、誰も見当たらないよ?」
「あ、確かに……」

 見渡しても、廃墟が続くばかり。
 霧も出ているようで、道の先なんて見えやしない。

「ちょっと神様とやら~。
 私たちを、一体どこに飛ばしたの?」

 眉間に皺を寄せて、ネネちゃんが不満を口にする。
 すると、なぜか目の前のフードの女の子が喋った。

「すみません」と。

「ん? 今、あの子しゃべった?」

 すると聞き間違いじゃなかったのか。
 フードの子は、もう一度謝った。

「すみません」
「あ、あの……、何に対して謝ってるの?」

 私が聞くと、フードの子は、少しずつ私たちに近寄ってきた。
 警戒した連くんが、スッと私を隠すように目の前に立ってくれる。

「連くん、大丈夫だよ。
 それに、もし連くんに何かあったら、」
「いい。美亜を少しでも危険な目に遭わせたくないんだ」
「連くん……」

 王子様がお姫様に言うみたいなセリフ!
 こんな状況なのに、胸がドキドキする……!

「って、本当に王子と王女でしょ!
 あ~もう!
 その雰囲気をツツシメって言ってるの!」

 イライラしたネネちゃんが、怒りの矛先を、フードの子に変える。

「ほら、そこのフード女も!
 さっさと自己紹介をしてよね!」
「ね、ネネちゃん!」

 まるで、どこかのヤンキーみたいな口ぶりだよ!
 可愛いヒラヒラのドレスを着てるんだから、少しは自重して!

 だけど、フードの子は気にしてないみたい。
 むしろネネちゃんに言われた通り、フードをパサリととった。
 そこには、まだ幼い女の子の顔があって……。
 だけど、幼い顔に似合わない深刻な表情。
 その顔に、妙に胸がドキドキする。

「まだ子供、だよね?
 えっと、さっきから謝ってるけど、何に対して謝ってるの?」
「その、あの……色々な事に、です」
「例えば、どんな?」

 女の子に近づいて、膝を地面につけて視線を合わせる。
 連くんが「美亜!」と注意してくれたけど……、なんだか。
 この子は、敵じゃない気がするの。

「不思議なんだけど、私をずっと見守ってくれてたような。
 この子から、そんな雰囲気を感じるの」
「!」

 すると女の子は、目を見開いて、すごく嬉しそうに顔を緩ませた。
 そしてガシッと、私の両手を握る。
 しかもブンブンと振って……
 って、痛い痛い!

「み、見た目に寄らず、力が強いね!?」
「はい! だって私、見た目はこんなですけど、中身は二百歳のおばあちゃんですから!」

「へ?」
「あ、やべ」

 女の子は、フードを再びかぶろうとしたので、急いで阻止をする。

「どういうこと?」
「え、えへへ……」

 すると女の子により明かされた、衝撃の事実。
 その事実に、私も連くんも――
 驚きすぎて、腰がぬけるかと思った。

「実は私、イコール国の女王をやってます……。
 名前を、フラットといいます」
「イコール国?」

 復唱すると、連くんも「?」と首をかしげ、分からない様子だった。
 私も分からない。
 だって、今まで聞いたことないもん。

「まさか、子供の遊びに付き合わされてる……?」
「ま、真面目に話してるので、真面目に聞いてください!」
「は、はい!」

 どうにも聞いてほしいみたい……。
 妖しさ百パーセントだけど、最後まで聞いてあげるとしよう。

「実はこの異世界において、イコール国の女王のみ、魔法が使えます。
 それは、世界の平和を守るためです」
「平和?」

「そう。国同士は、必ずイコール――つまり平等じゃないといけない。
 二つの国をシーソーに乗せて、どちらかが傾くと、それは不満になり、やがて戦争に繋がる。
 その悪循環を阻止するため、魔法を使える私が、国々の平等を守るため、日々ヒッソリと活動しているのです」
「つまり……」

 イコール国は、各国の敵でも味方でもない。
 女王が魔法を使い、日々の平和を作ってる……ってこと?

 簡単にまとめると、女の子――フラット王女は頷いた。
 だけど、どうして今まで秘密に?

「国の存在まで隠さなくても、いいじゃないの?」
「国、というほどの物でもないんです。
 だって、国民は女王の私――たった一人ですもん」

「え、えー!?」
「国が貧乏すぎて、皆が他国へ出稼ぎに言ったきり、帰らなくなりまして。
 今年、無事に国民ゼロとなりました……ハハ」

 まぁ、どうせ世界に認知されてない国なんで、いいんですけどね――というフラット王女の表情は暗い。

「でも、イコール王国の事は、出稼ぎに出た国民から情報が洩れるんじゃないの?
 どうして、今まで隠し通せたの?」

 連くんが、フラット王女に聞く。
 あ、言われてみれば、確かに。
 だけどフラット王女は「カンタンですよ」と笑う。

「国を出た時点で、魔法を使って記憶を消してますから。
 誰もイコール国の事を覚えてません」
「すごい効果があるんだね。君の魔法は……」

 連くんが「ほう」と感心する中、フラット王女は頷く。

「当たり前ですよ。
 そこのミア王女が私を”神様”と勘違いするくらい、私の魔法はすごいんですから!
 それに、タイムスリップさせたり、年齢を変えたりも、お茶の子さいさいです!」

「え?」
「ん?」

 今、なんて?
 タイムスリップっていった?
 するとフラット王女も「あ」と言って、口を滑らした事に気付いたようだ。
「え~っとぉ」と、逃げるしぐさをする。

 まぁ、もちろん。

 ガシッ

「逃がさないからね?」
「どういう事か、説明してもらおうか?」

「は、はひ……」

 私と連くんにより、フラット王女は捕まる。
 そして私と連くんが、この世界にきた理由を――洗いざらい、全て話してくれたのだった。
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