両思いでしたがタイムトリップして、敵国の王子と王女になりました!?
全ては運命!
「ねー! いつになったらロロを助けに行くのー!?」

 と、ネネちゃんが何度も叫ぶ中。
 私と連くんは、フラット女王を問い詰めていた。

「さ、話してもらおうか。
 こっちはあまり時間がないからね。
 手短に頼むよ?」
「も、もちろんです……」

 連くん、強い!
 連くんの背後から、トラが見える!
 すっごい強そうなオーラが、漂ってるよ!
 そのオーラにあてられて、フラット女王は素直に話し始めた。

「さっきも言いましたが、私は世界の平和を守るのが役目です。
 だけど、ある日。気づいてしまった。
 亡国だったダイア国の王・ソフィアが、秘密裏に妖精を作った事に。
 その背景に、世界を掌握しようとする、ソフィアの陰謀が潜んでいる事に」
「!」

 私と連くんを見たフラット女王は、申し訳なさそうに眉を下げた。

「ダイア国を止めるには、各国が一丸となって立ち向かわないと止められない――そう思いました。
 だから、各国が効率よくまとまるよう、各国に必要な人物を配置しました」
「配置しましたって……。
 それが、レン王子とミア王女って事?」
「そうです」

 頷くフラット女王に、私は開いた口がふさがらない。

「でも、なんで、わざわざ異世界から私と連くんを選んだの?決め手は?」
「さっきも言いました。
 ”効率よく国をまとめたい”と。
 思い合っている二人を違う国に配置すれば、その二人は必ず会いたいと願う。
 そして会うためには、国同士の仲を深めようとするのではないか――そう思ったのです」

 つまり――と、フラット女王。

「各国が一つにまとまらなければ、ソフィアの陰謀は阻止できません。
 だから、強く強く想い合っている二人でないと、各国に配置できなかった。
 あなた方は、心から強く想い合っていた。
 だから、例え異世界からであっても、来ていただいてほしかったのです」

 そう言われると……。
 なんだか、悪い気がしないのは、きっと私の脳内が浮かれているからだと思う。
 現実に、連くんは怒った顔のまま、フラット女王に尋ねた。

「つまりよくいう”救世主”として、俺らは召喚されたわけだね?」
「はい」

「年齢を十歳引き上げて召喚したわけは?」
「それは~……、私の趣味、です……」

「……」
「え、えへ」

 ニコリと笑った可愛らしいフラット女王を見て、連くんの顔に青線が入る。

「ねぇ美亜、今から神様の化けの川をはがそうと思うんだけど、どう思う?」
「きゃー! 追い剥ぎー!」

 どうやら連くんはフラット女王の事が気に入らないみたいで、納得いかない顔をしている。
 確かに同感。
 やる事が無茶すぎて、ついてけない。

 だけど、まだ話してほしいことがある。
 それは、さっき彼女が言っていたこと。

 ――そこのミア王女が私を”神様”と勘違いするくらい、私の魔法はすごいんですから!

 言葉のままだと、私が今まで「神様」と呼んでいた相手はフラット女王で……。
 つまり、魔法で剣を出したり、異世界と学校を行き来させていたのは、フラット女王だったって事?

 尋ねると、フラット女王は頷いた。

「その通りです。
 勝手に召喚した手前、完全に放置するのも悪い気がして……。
 だから助けられる範囲で、チョイチョイ手助けしてました」
「チョイチョイって……」

 言葉が軽いよ!
 こっちは世界をまたにかけて、飛び回ってるんだよ!?

「っていうか。
 この世界を助けてほしいっていうなら、どうして、さっき元の世界に戻したの?」

 世界を行き来したの、完全に無駄骨だったよね!?
 するとフラット女王は「仕方なかったんです」と、人差し指同士を合わせながら、口を尖らせた。

「妖精ロロが連れ去られた大きな羽に、あなた方も巻き込まれるかと思ったのです。
 あの羽は、おそらくソフィアが作ったもの。
 ソフィアは魔法は使えませんが、すごい発明家で……。
 たまに私の魔法よりもスゴイのでは!?と、私が落ち込むことがあるほどです」
「つまり、あの羽から私たちを助けるために、いったん元の世界に戻したってわけだね?」
「はい」

 なんだ、そうだったんだ……。
 でも、これで全てが繋がった。

「私と連くんは、来るべくして、ここに来たんだね。そっか、分かった」
「美亜……怒らないの?
 こんなに勝手な事をされて」

 そう言う連くんの顔には「怒り」の二文字が浮かんでいる。
 私だって、そりゃ怒りたいよ。
 平和な日常を返せー!って言いたいよ。
 でもね、連くん。

「さっき、私と連くんは褒められたんだよ?
 二人共、お互いがお互いを強く想い合ってるって……。
 それを聞いて、すごく嬉しかったの。
 私が連くんの事を思っているように、連くんも、私の事を思ってくれてるんだなって」
「美亜……」

「単純なんだけどさ、それを聞いたら、フラット女王の事を憎めなくて」
「そっか。うん……そうだね」

 えへへ、と笑い合う私達。
 恥ずかしさと、照れと、少しの気まずさと。
 十歳特有の反応を、それぞれがした――
 その時だった。

「も~!そんなのはいいから、早くロロを!」

 と叫んだネネちゃんの後ろに、白い羽が浮かぶ。
 あれは、ネネちゃんの羽じゃない!
 さっきも見た!
 あれは――ソフィアだ!

「皆さん、気を付けてください!
 ソフィアの羽です!
 ネネさんを回収しに来たんだと思います!
 ネネさんを守ってください!」
「回収って言い方しないでよね!」

 ネネちゃんが怒った、その時。
 羽がネネちゃんに向かって、勢いよく飛んできた。

 するとフラット女王が「連さん、これを!」と、魔法で出した剣を、連くんに投げた。

「助かるよ! ありがとう、フラット女王!」
「いえ。その羽を切れば、ひとまずネネさんは安心です!
 だから、羽を狙ってください!」

 女王の言葉を聞いて、連くんは剣を振り続ける。
 だけど、すばしっこい羽を捕まえるのは難しいみたい。
 剣術が優れている連くんでさえ、横顔に汗が浮かんでいた。

「フラット女王、私にも剣をくれないかな?」
「え、でも……」

「この時のために、今日まで特訓してきたから。
 ね、お願い!」
「わかりました……。
 でも、無理はしないでくださいね」
「うん、ありがとう!」

 フラット女王、優しいな。
 そんなに私の事を心配してくれるなんて!

「あなたが怪我でもしたら、私が連さんに八つ裂きにされちゃいます!」
「……そっち?」

 まあ、いいや!
 連くんが困ってるんだもの。
 助けない手はない!

 カチャリと、剣を構える。
 いつか私の前に現れた、ピンクの取っ手の剣。
 すごく軽くて、振りやすい。

「美亜!? 危ないから、そんな物は仕舞って、」

 私をやめさせようとした連くん。
 だけど、私にだって引き下がれない理由がある!

「ダメ! だって約束したもん!
 今度は私がネネちゃんを守るって!
 ネネちゃんは、大事な仲間だもん!
 ね、そうでしょ? 連くん!」
「美亜……」

 すると連くんは「無茶しないでよ」と。
 飛んでくる羽に向かって、剣を構えた。
 ふり降ろした剣は、羽に少しだけあたる。
 惜しい、もうちょっと!

「っていうか、どうして、あの羽はネネちゃんを狙ってるの!?」

 すると、遠くで私たちを見守るフラット女王が答えた。

「ソフィアが妖精を作ったのは、もともとスパイが目的ですから。
 だから、スター国の状況を詳しく知ろうとネネさんの回収に来た……というわけです」
「だから、回収って言葉を使わないでよ!」

 ムキ―!と怒ったネネちゃん。
 羽に捕まらないように、あちらこちらに飛んで、追跡をかわしている。
 だけど、だんだん息がきれてきたネネちゃん。
 この時を見計らったように羽は素早く移動して、ネネちゃんの背後にピタリとくっついた。

「ヤバ……っ!」
「ネネちゃん!」

 ネネちゃんと羽の間に、急いで手を伸ばす。
 すると、間一髪。
 私の手は、ネネちゃんを守る良い壁となった。

「良かった、ネネちゃん!」

 私の手が邪魔で、羽は諦めた……ように見えた。
 でも、そう見えただけだった。

「危ない、美亜!」
「え?」

 なぜか羽の中心に、ギザギザの歯がズラリと並ぶ口があった。
 しかも、その口は、私の手を勢いよく噛もうとしている。
 ま、待って待って!
 あの手に噛まれたら、指が無事じゃ済まないんですけどー!?

「ひゃあー!?」

 怖くて、目を瞑った私。
 だけど――
 訪れるだろう痛みが、全く来ない。
 アレ?
 まさか痛すぎて、気を失った?

 おそるおそる目を開ける。
 すると、そこには――

「よぉ、ミア」
「ろ、ロロ!?」

 私の手を守るように。
 ロロが羽の口の中に、握りこぶしほどの石を詰め込んでいた。
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