ただ君を愛したいだけ
「はい。陽菜と言います。三歳で、あけぼの保育園のゆり組に通っています」

「事故については覚えてますか?」

「陽菜と信号待ちをしていたら、白い車が……」


あのときの恐怖と焦りを思い出すと、顔がゆがむ。

とにかく陽菜を守らなくてはととっさに突き飛ばしたが、陽菜を失ったらと怖かった。

言葉に詰まってしまい、でも続けなくてはと息を吸うと、智治さんが励ますかのように右手を握った。


「すみません。思い出したくないですよね。今はそれだけで十分です。記憶も大丈夫そうですね」


堀田先生はそのときの記憶があるのか知りたかっただけで、くわしく聞き出そうとしているわけではないようだ。

「事故で頭を打って、脳震盪(のうしんとう)を起こされました。様々な検査の結果、今のところ出血等は認められません。ただ、意識を失っていた時間が長めですし骨折や全身打撲もありますので、一週間ほどは入院して経過観察させてください。安静にしてくださいね」


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