ただ君を愛したいだけ
私は彼の下で働いていたのだが、上司としてはとびきり厳しい人だった。

けれど、恋人としての彼は優しくて常に私のことを気にかけてくれて……。
もうこんな恋はできないと思うほど、情熱的に愛し合った。

ところが、そう思っていたのは私だけ。
彼はあっさり私を捨てて、別の女性と婚約した。

別れたあと妊娠が発覚したため、彼は陽菜が自分の子だとは知らない。


「すみません。陽菜のことまで……」

「陽菜ちゃん、優しい子だね。自分も擦りむいたのに、ママのことばかり気にして、ずっと泣きじゃくってた。パパはいないって言うから、ひとりで家に帰すわけにもいかず俺のマンションに泊めたよ。警察や救急の先生には、昔の上司だと話して会社に電話を入れて、信用してもらった。勝手にごめん」


そこまでして、智治さんが面倒を見てくれたの?


彼が上司だったのは本当だけれど……それどころか結婚を考えるほどの仲だったけれど……、今はもうなんの関係もない人だ。

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