ただ君を愛したいだけ
あのまま立ち去ってもおかしくなかったのに、わざわざ会社にまで確認を取るように促して、あやしい人物でないことを証明したのだろう。

多分、私がすでに父も母も亡くしていて実家に頼れないことを知っているからだ。


それにしても……パパはいないという陽菜の言葉に、胸がチクチク痛む。
だって陽菜の父親は、目の前の彼だからだ。

ううん。陽菜のパパはいないの。
陽菜は私だけの娘なの。

複雑な思いが頭を駆け巡り、心がざわつく。


「……いえ。ありがとうございました」
「いちご、好きなんだね」
「あっ……」


事故のときのつぶれたいちごを思い出し、声が漏れる。


「陽菜ちゃんが、ママにいちごを食べさせてあげたいってずっと言ってたよ。買ってあげようとしたんだけど、ママと一緒がいいからいらないって。食べられそうだったら、買ってくるから一緒に食べてあげて」

「そんなことまでしていただかなくても。本当にすみません」


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