ただ君を愛したいだけ
御曹司ではあるけれど、とにかく努力の人。

市場調査から他社製品の研究まで抜かりなく、仕事に対する熱量が驚くほど高かった。

もともと将来の社長のいすが約束されているうえ、実力まで備わっている彼は、容姿まで完璧。

百八十センチを超える身長に、すらりと長い脚。高い鼻梁(びりょう)にぱっちりした目。

額にかかる艶のある黒髪をかき上げる姿は、あの頃と少しも変わらない。

彼ほどの人なら、ばつがひとつついていようが、いくらでもお相手がいるだろうに。
たまたま今、彼女がいないのだろうか。


「好きな人は……いるけどね」


やっぱり、そうだよね。

なぜか胸がチクリと痛む。

彼は私に別れを告げる前に別の女性と婚約した最低な人なのだ。
今さらショックを受けるなんておかしい。


智治さんの実家に結婚の挨拶に行こうと話していた頃、大手ドラッグストアチェーンを経営している会社の社長令嬢と彼との婚約の噂(うわさ)が飛び交った。

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