ただ君を愛したいだけ
そんなつらい経験をしたものの、陽菜という宝物を授かり、なんとか這(は)い上がった。


彼に捨てられてビーカインドを辞めるまで、世間からは〝バリキャリ〟という目で見られていたし、仕事に励む自分が好きだった。

けれどこの三年は、陽菜のよきママになれるようにと心を砕き、彼女中心の生活を送ってきた。

そこに、智治さんが入る余地なんてなかったはずなのに。

陽菜と智治さんが言葉を交わしているという状況に、戸惑いを隠せない。


それでも、助かったのは事実だ。
陽菜が泣かずに済むのなら、私の気持ちなんてどうでもいい。


その後、鎮痛剤が効いてきて痛みが引いた私は、うつらうつらしてしまったようだ。

枕元に置いてあったスマホの着信音に気づいて目覚め、慌てて電話に出る。


『もしもし、ママ?』


ああ、いつもの陽菜だ。

たった一日離れていただけなのに、胸に込み上げてくるものがある。


「もしもし、ママだよ。陽菜、寂しい思いをさせてごめんね」
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