ただ君を愛したいだけ
『ママぁ、会いたいよお』


突然電話口の陽菜が泣き始めるので、胸が張り裂けそうに痛む。

我慢に我慢を重ね、限界を超えたに違いない。


『明日会えるよ。ママ、まだちょっと痛いんだ。今日はゆっくり寝かせてあげようね』


電話の向こうから、陽菜をなだめる智治さんの声が聞こえてくる。


『うん。ママ、痛いの?』
「病院の先生が治してくれてるから、痛くなくなってきたよ」
『ほんと?』
「うん、ほんと。陽菜、今日は渋谷さんと一緒にいい子にしていられるかな?」


もう散々我慢しているのはわかっているので、こんなふうに言いたくはない。

でも、育児の経験なんてないだろう智治さんに迷惑がかかるのも忍びなく、念を押す。


『渋谷さんだあれ?』
『おじさんのことだよ』


陽菜は智治さんの名前を知らなかったようで、智治さんが説明している。


『なあんだ。智くんかあ』


まるで保育園の友達のように智治さんを呼ぶので、びっくりしてしまった。

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