ただ君を愛したいだけ
看護助手が私の様子を見ながらゆっくりベッドを上げていく。


「気分悪くないですか?」
「大丈夫です」


どうやら大丈夫そうだ。脚も頭も痛くない。


「食器は取りに来ますからそのままで。横になりたいときはこのボタンを押すとベッドが下がります。なにかあれば迷わずナースコールを」

「ありがとうございます」


なにもできない赤ちゃんの陽菜の世話をしていた自分が、まさかこれほど他人の手を借りなくてはならなくなるとは。

慣れた手つきで配膳を済ませた看護助手が出ていくと、ポツンと取り残されたかのようで少し寂しい。

陽菜の笑い声が聞こえないのが不思議だ。


ときには溜息をつきたくなることも、つい感情的になって雷を落とすこともあるけれど、陽菜は私の体の一部のようなもの。

目に入れても痛くないとはこういうことなのだと、身をもって経験している。

陽菜がお腹に来てくれなければ、今でも智治さんへの未練で枕を濡らしていたかもしれない。

< 28 / 51 >

この作品をシェア

pagetop