ただ君を愛したいだけ
あの手この手で、気を紛らわせてくれたのではないだろうか。

お礼を言うと、智治さんは昔と変わらない柔らかな表情で首を横に振った。


「陽菜ちゃん、すごくいい子にしてたんだ。ママにお土産ってたくさん絵を描いてね」


智治さんは私にお絵描き帳を見せてくれる。

そこには、ぐにゃりと曲がった円に、目と口らしきものが描いてあった。

頭から棒状の手と脚が出ているだけだけれど、外遊びが大好きであまり絵を描かない陽菜が頑張ってくれたと思うと、感慨深い。


「ママを描いてくれたのかな?」
「先生といっちょに描いたー」


そういえば、智治さんが園に連絡を入れてくれたとき、お絵描きをしていると報告があったと話していたっけ。


「これはねー、智くんといっちょ」


陽菜は自慢げにもう一枚めくる。

するとそこには、やはり同じように私の顔と、赤い丸の中に点が描かれているものがある。


「いちごー」
「そっか、いちごか。上手よ、陽菜」


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