ただ君を愛したいだけ
「陽菜、あのね。智治さんはお仕事があるの。だからママが退院するまで、別の人と一緒にいられるかなあ」


残酷な話をしているのはわかっているが、理解してもらうしかない。

思いきってそう伝えると、陽菜の顔がみるみるうちに曇った。
口がへの字に曲がり、目から大粒の涙があふれだす。


「陽菜、ごめんね。先生に早く退院できないか相談するから」


今朝は難なく起き上がれたし、鎮痛剤が切れても昨日ほどつらくない。

通院でなんとかなるなら陽菜と一緒にいてやりたい。


「いやあ、陽菜もお泊まりしゅる!」
「ごめんね。できないの」
「いやいやいや!」


陽菜はその場に座り込み足をじたばたさせて、全身で不快感を表す。


「どうした?」


廊下まで泣き声が聞こえたのかもしれない。智治さんが駆け込んできて、陽菜を抱き上げた。


「ママといっちょいいー。違う人とお泊まりいやあ」


智治さんの首にしがみつき、駄々をこねる陽菜の気持ちがわかるだけに切ない。

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