ただ君を愛したいだけ
忙しい毎日を過ごしていると、陽菜の問いかけに生返事をしたり、なにかをしたいと訴えられても『また明日ね』とごまかしたりしてしまう。

でも智治さんは、陽菜の要求に全部応えてくれたのだろう。


「よし。今日は公園行って、お買い物して、ご飯食べて、お風呂で遊んで……忙しいぞ」
「クルクルと、とりーともしゅる!」


興奮気味の陽菜は、いすから下りて智治さんに抱きついている。

あのとき別れなければ……これが私たちの日常だったのだろうか。

陽菜は余裕がなくてイライラしてしまう私に叱られる時間も減って、笑顔で過ごせたのだろうか。

ふとそんなことを考えてしまい、打ち消す。


智治さんは、私を捨てたの。
もう私の人生には関係ない人なの。

彼に危うく引き寄せられそうになり、自分にそう言い聞かせる。


「そうしよう。それじゃあそろそろ行こうか。ママは休ませてあげないとね」


彼の洞察力は相変わらずだった。
少し頭が痛くなってきたのだ。

< 48 / 51 >

この作品をシェア

pagetop