ただ君を愛したいだけ
男性の緊迫を纏う声色から、自分にとんでもないことが起きたのだと、他人事のように考える。


「瑞葉……?」


私の名を呼ぶあなたは誰?

太陽の光がまぶしくて男性の顔がよく見えない。


「ひ、陽菜……は?」


陽菜を捜そうと顔を横に向けると、買ったばかりのいちごがぐしゃりとつぶれていて、陽菜が泣いているのではないかと心配になる。


「陽菜……どこ……」


私の記憶はそこでぶつりと途切れた。



ふと目覚めると、白い天井が見える。

ピッピッという電子音と、ツーンと鼻孔をくすぐる消毒薬のにおい。

左手には点滴がつながれており、頭に包帯が巻かれていた。


ここは病院だろうか。
なんで私……病院になんているの?


なぜか体がずっしりと重く、身じろぎできない。

仕方なく頭だけを動かして窓の外に視線を送る。

すると、春の霞(かすみ)の向こうに、おぼろげながらあの人の顔が浮かんだ。


どうして、今さら思い出すの?


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