ただ君を愛したいだけ
記憶を必死に手繰り寄せてなにがあったのかを思い出そうとする。

しかし、自分がどうしてここにいるのかは出てこない。


「陽菜、は? ……どこ!?」


陽菜はどうしたのだろう。
私が病院にいると知っている?


混乱と焦りで少し大きな声が出ると、ドアが開いてスマホを手にした男性が駆け込んできた。


「痛むか?」
「どうして……」


眉をひそめながらアーモンド形のぱっちりした目で私を見つめるのは……四年前に別れた、渋谷(しぶや)智治さんだった。


「偶然、事故現場を通りかかって。救助に行ったら、瑞葉だったんだ」


事故?

彼にそう言われて、白い暴走車が突っ込んでくる光景が頭をよぎる。


「陽菜は?」
「擦り傷だけだから心配いらない」
「よかっ……よかった」


興奮して起き上がろうとすると、彼に止められた。


「とっさに陽菜ちゃんを突き飛ばしたみたいだね。瑞葉の機転で、陽菜ちゃんは助かったんだよ」


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