月が青く染まる夜に
廊下の静寂が、二人を包んだ。


誰かの足音が遠くでして、私たちは慌てて離れる。
急ぐように手を繋いで駆け足でエレベーターに乗り込んだ。

小さな箱の中で、私も迅和くんも少しだけ息を乱している。

目尻を下げているその顔を見て、やっと実感する。
────私たち、両思いだ。


私の部屋の前に着いたところで、ようやく手を離した。

扉を開けたら、襖の向こうには真奈美さんがいるはずだ。
きっと、何かを察する人。

全部バレてそうな予感もするけれど、まあそれは彼女にも助けてもらったのだから仕方がない。


「また、明日」

私がそういうと、彼は小さくうなずく。
ちゃんと私だけを見ていた。

「うん。おやすみ」

彼が廊下の角を曲がるまで、見送った。
名残惜しい温度だけが、手のひらに残っていた。


襖を開ける前に、立ち止まって深呼吸をして、襖を開ける。

「あ。おかえりー」

明るい真奈美さんの声。
テレビからはバラエティー番組が流れていて、彼女の手には缶チューハイ。

何かあった?とは聞いてこない先輩の配慮が、今は心地がいい。

「紗菜ちゃん?夜はこれからよ。一杯つきあってよね」

木製のテーブルに、待ってましたとばかりにコン、と缶チューハイを置いてきた。
分かってます、とプルタブを開けて、二人で缶を合わせる。


今夜は、もう隠せないくらい、満たされている。
こんな気持ちは、もしかしたら初めてかもしれない。



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