月が青く染まる夜に
出社して最初にする総務の仕事は、いつも決まってメールのチェックだった。

まだ半数ほどの人しか出社していない満員ではないフロアは、コピー機の微かな唸りと、空調の低い風音と、少しのざわめきが響いている。
デスクの椅子を引くと、キャスターが床を小さく鳴らした。


パソコンを立ち上げ、受信ボックスを開く。未読がずらりと並ぶ画面に、思わず息を一つ飲む。

昨日の点検関連が来ている。

件名を目で追う。

「北翔変電所 定期点検:作業工程変更について」
「協力会社到着遅延に伴うスケジュール調整依頼」

スクロールすると、添付された工程表には赤字の修正がいくつも走っていた。
午前中に予定していたクレーン作業の時間がずれ込み、現場の配置図も一部変更になるらしい。

そのとき、ふと気づく。

迅和くんの席が空っぽなのは、現場に行っているからなのだ。
デスクワークが中心とはいえ、彼が現場に行くこともそこそこある。
彼だけではなく、交通設備課はなにかトラブルがあればすぐさま飛んでいく。そういうところである。


「もう行ってるんだ…」

小さくつぶやいて、再び画面に視線を戻した瞬間だった。

電話が鳴る。
受話器を取ると、設備課の上司の少し焦った声が飛び込んできた。


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