月が青く染まる夜に
お茶を入れたカップを二つ持ってきて、テーブルに置いた。

私がソファに座ろうとすると、その間にふわりとちくわも飛び乗る。
どん、と。
物理的に私と迅和くんを遮断するように真ん中に。

「すごいな、ちくわの紗菜さんへの思い」

「通してくれないね」

私が笑うと、ちくわは迅和くんを睨んだまま尻尾を大きく振った。
侵入者チェックは継続中らしい。

「ちくわ、いい子だから」

抱き上げても、腕の中でも低く唸る。
完全に、“私は味方、でも隣の男は不審者”という構図。

迅和くんはカップのお茶を飲みながら、ちくわの威圧的な態度に戸惑っている。

「…時間かかるタイプ?」

「この感じだと、たぶん」

「どのくらい」

「三ヶ月?」

「だいぶ長いな…」


そんなやりとりをしているうちに、少しずつ空気が柔らぐ。
テレビをつけて、お茶を飲んで他愛もない番組を流す。

ちくわはようやく落ち着いてきたのか、ソファから降りたものの、少し距離を取って座り込み、しかし視線は外さない。

監視は続行しているようだ。

ちくわの監視は分かった上で、迅和くんが悩ましげに眉を寄せた。

「…怒られるかな」

「ちくわに?もう怒られてるよ」

「もっと怒るかも」


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