月が青く染まる夜に

エピローグ


窓の外が、少しだけ明るい。

冬の白さとは違う、ほんの少し色を含んだ光。
街路樹の枝先はまだ硬いけれど、よく見れば小さな芽がついている。



信号機の赤が、どこかやわらいで見えた。

退勤時間、交差点で寄り添うように並ぶ。


コートはまだ必要。
でも、風はもう刺さらない。


迅和くんが、じゃらりとキーホルダーを鳴らす。
癖みたいな音。

「寒くなくなってきたね」

「うん。ちょっとだけ」


赤から青へ。

どちらからともなく、同じタイミングで一歩踏み出した。
肩が触れる。
でも、離れない。


横断歩道の白が、夕方の光をやわらかく跳ね返す。

春はまだ途中。
私たちも、きっと途中。

それでもいいと思えた。


青に変わるまでの時間さえ、もう、ひとりではないのだから。


信号は、静かに青を灯していた。



𓂃⟡.·おしまい𓂃⟡.·
< 164 / 164 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:22

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

恋を知らないきみへ

総文字数/206,270

恋愛(オフィスラブ)308ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
人に恵まれてここまで生きてきた。 仕事は順調。 彼氏もいる。 人間関係も良好。 そんな中、ふと現れた よく知りもしない同期。 「俺、たぶんきみのこと、嫌いだと思う」 ぶつかり合いから始まる 不器用な恋がある。 あなたは初めて 私に“好き”を教えてくれた。 ───木ノ下くん。 私、たぶんあなたのこと、好きだと思う。 ◇◆◇◆◇ R8.7.25 連載START
あと30日で、他人に戻るふたり

総文字数/256,866

恋愛(ラブコメ)403ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
それはいわゆる ドラマほど情熱的でもなく 漫画ほど急展開を迎えることもなく 少しずつ、 本当に少しずつ 距離が縮んでいく ちょっとだけ噛み合わないふたりの 不器用な恋のお話 ◇ いわくつきの部屋で 突然はじまった はじめましての男女の同居生活 日めくりカレンダー 一緒にめくってみませんか R8.5.22 完結しました
恋は手のひらの上で

総文字数/127,614

恋愛(オフィスラブ)228ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
─────あ、私の好きな手だ。 それは直感みたいな 運命みたいな 必然みたいな その手を取ることは 私にとって 最高の“幸せ”だ R8.2.28〜R8.3.17 連載 完結しました。 ••┈┈┈┈•• スピンオフ作品 「この恋、予定外。」も完結しています。 そちらもぜひよろしくお願いします! ⁡⁡✼••┈┈••✼⁡ 銀野あお様 素敵なレビュー ありがとうございます!

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop