月が青く染まる夜に
歩道の街灯が、私たちの影を長く引き伸ばす。
アスファルトに伸びた二つの影が、並んだり、少し離れたり、また近づいたり。


「霜鳴川、冬でも空が広いんですよ」

不意をついたような言葉に、私はついさっきまで軽口を叩いていたのを忘れて彼を見つめた。
足も止まってしまった。

それに合わせて、彼もちゃんと歩を止める。

「今度の日曜日、空いてますか?たぶん風、強いですけど」

胸がひときわ強く脈打つのが自分でも分かった。
けたたましい心臓の音が、私のすべてを邪魔する。


デート?デートの誘い?

いや、デートなんてワードは出てきていないし、“空いてますか?”ってそれしか言っていないはず。
ただ、ずっと曖昧だったはずのこの空気感に、ひとつ滴を落とされた気分だった。

私が一時停止したからか、迅和くんは怪訝そうな表情で覗き込んできた。

「紗菜さん?聞こえてます?今度の日曜…」

「き、聞こえた聞こえた!日曜日!」

リピートされるともっと恥ずかしくなりそうで、慌ててうなずいた。

「霜瀬川…」

答えようとする声が、自分でもじれったい。

約束じゃないかもしれない。けれど確かに置かれた言葉だと思ったから。

「見に行ってみようかな…」

口にした時、胸の奥で小さく音が鳴った。

「風に飛ばされない格好してきてくださいね?」

確認されるように念押しされ、急いでうなずく。


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