2Kの君~終電帰りの限界OL、2Kの扉を開けたら異世界騎士の部屋でした
「言っておくがな。暫く俺もお前も此処から出られないと思うぞ。まぁお前は不幸にも巻き込まれたわけだが」
振り返るシェイルの髪先に目を奪われていた凛子は、むっとしたように唇を引き結んだ。
「勿体ぶらないで、とっとと開けてよ」
「そう急くな」
笑いをかみ殺すように肩を揺らしたシェイルが、玄関の扉を開く。
そうして向こう側にひろがる空間に、凛子はあんぐりと開けた口を暫く閉じる事ができなかった。
「な、なにこれ――」
一歩踏み出して、足を止める。
一体いつ、だれが、どうやって。
石造りの広い空間。
四隅に備え付けられた金属製のトーチから燃え上がる炎が、その空間を明るく照らしている。
飴色に磨きこまれた大小のチェストが左壁に並び、窓にかかるカーテンは濃藍。正面には作り付けの暖炉。
右手に両開きの大きな扉、部屋――部屋と言ってもいいのだろうか――の中央に敷かれた紋様の織り込まれた深紅の絨毯の上には、ゆるやかなカーブを描く飴色をしたテーブルと、長椅子。
この冬の特集として取り上げようと思っていた古城ホテルの一室のようではないか。
「ここどこよ……」
「俺の部屋だ」
「ちょっとまって、だって」
背後を振り返る。
見慣れた灰色のドアは無く、複雑な彫りが絡みあう木製の扉がある。
飛びつくように開くと、脱ぎ散らかされた自分の靴が見え、差し込まれた光によって照らされた埃が舞い上がった。
「ええ、なん……で?」
自分の部屋と古城ホテルのような居室を繰り返し見、凛子は、扉に片手をかけて面白そうに細められた青灰色の瞳を見上げる。
「この扉ひとつを隔てて、俺の世界とお前の世界は繋がっているという訳だ」
「――訳だ。って……なんで!?」
「誰にも知られぬ誰も知らぬ願えば開かず願わずとも開く――そういう術が施されていたのだろう。この扉の紋様が恐らくそうだな。願わず――無意識に力を注ぎ込むのが発動条件のひとつか」
「ぜんぜん言ってることが判んない」
「俺にも委細は判らないが心当たりはある」
堂々巡りになりそうな問答に、凛子はぽかんとしたままの顔でシェイルを一瞥し、視線を落とすと、脱ぎ散らかされていた靴を揃え自分の城へ入り、ドアを閉めた。
「おい!」
ついでに鍵も閉める。
「寝よっと」
酔っ払っているのかもしれない。
350ミリリットルを三缶。
六%程度のアルコール分で酔えるかどうかは自信ないが、おかしなことが起こっているのには間違いない。
先へと広がる暗闇に向かってペタペタ歩き出すと、開錠の音と共に、勢いよくドアが開かれた。
薄暗かった廊下が忽ちのうちに照らされ、まるでホラー映画のような巨大な影が落とされる。
「いやぁああああああ! かぎ閉めたのに!!」
両腕で自分を抱きしめ首だけで振り返ると、少々慌てた形相をした男。
亜麻色の長い髪。襞が多く取られている白く長い衣を身に纏っている夢の世界の住人が、ずかずかとこちらに向かってくる。
「こ、来ないでよっ!」
「本来なら此処は俺の寝所だ」
「知らないよそんな事! だってここ、私の部屋だもん!」
逃げるようにリビングに飛び込むと、床に突き立てられたままの短剣が鈍色の光を反射させる。
「こんな狭い場所が部屋なものか」
「狭いって、し、失礼ね! 一人暮らしで2Kもありゃ充分だよ! っていうかその物騒なもの持って帰ってよ!」
振り返るシェイルの髪先に目を奪われていた凛子は、むっとしたように唇を引き結んだ。
「勿体ぶらないで、とっとと開けてよ」
「そう急くな」
笑いをかみ殺すように肩を揺らしたシェイルが、玄関の扉を開く。
そうして向こう側にひろがる空間に、凛子はあんぐりと開けた口を暫く閉じる事ができなかった。
「な、なにこれ――」
一歩踏み出して、足を止める。
一体いつ、だれが、どうやって。
石造りの広い空間。
四隅に備え付けられた金属製のトーチから燃え上がる炎が、その空間を明るく照らしている。
飴色に磨きこまれた大小のチェストが左壁に並び、窓にかかるカーテンは濃藍。正面には作り付けの暖炉。
右手に両開きの大きな扉、部屋――部屋と言ってもいいのだろうか――の中央に敷かれた紋様の織り込まれた深紅の絨毯の上には、ゆるやかなカーブを描く飴色をしたテーブルと、長椅子。
この冬の特集として取り上げようと思っていた古城ホテルの一室のようではないか。
「ここどこよ……」
「俺の部屋だ」
「ちょっとまって、だって」
背後を振り返る。
見慣れた灰色のドアは無く、複雑な彫りが絡みあう木製の扉がある。
飛びつくように開くと、脱ぎ散らかされた自分の靴が見え、差し込まれた光によって照らされた埃が舞い上がった。
「ええ、なん……で?」
自分の部屋と古城ホテルのような居室を繰り返し見、凛子は、扉に片手をかけて面白そうに細められた青灰色の瞳を見上げる。
「この扉ひとつを隔てて、俺の世界とお前の世界は繋がっているという訳だ」
「――訳だ。って……なんで!?」
「誰にも知られぬ誰も知らぬ願えば開かず願わずとも開く――そういう術が施されていたのだろう。この扉の紋様が恐らくそうだな。願わず――無意識に力を注ぎ込むのが発動条件のひとつか」
「ぜんぜん言ってることが判んない」
「俺にも委細は判らないが心当たりはある」
堂々巡りになりそうな問答に、凛子はぽかんとしたままの顔でシェイルを一瞥し、視線を落とすと、脱ぎ散らかされていた靴を揃え自分の城へ入り、ドアを閉めた。
「おい!」
ついでに鍵も閉める。
「寝よっと」
酔っ払っているのかもしれない。
350ミリリットルを三缶。
六%程度のアルコール分で酔えるかどうかは自信ないが、おかしなことが起こっているのには間違いない。
先へと広がる暗闇に向かってペタペタ歩き出すと、開錠の音と共に、勢いよくドアが開かれた。
薄暗かった廊下が忽ちのうちに照らされ、まるでホラー映画のような巨大な影が落とされる。
「いやぁああああああ! かぎ閉めたのに!!」
両腕で自分を抱きしめ首だけで振り返ると、少々慌てた形相をした男。
亜麻色の長い髪。襞が多く取られている白く長い衣を身に纏っている夢の世界の住人が、ずかずかとこちらに向かってくる。
「こ、来ないでよっ!」
「本来なら此処は俺の寝所だ」
「知らないよそんな事! だってここ、私の部屋だもん!」
逃げるようにリビングに飛び込むと、床に突き立てられたままの短剣が鈍色の光を反射させる。
「こんな狭い場所が部屋なものか」
「狭いって、し、失礼ね! 一人暮らしで2Kもありゃ充分だよ! っていうかその物騒なもの持って帰ってよ!」