どうやら飼い慣らされていたのは、わたしの方だったようです

10.魔女集会の夜

 宵闇に影がぶわりと浮かび上がる。それは無数に溢れてきて、やがて人の形を成す。姿を現した女達は豊満な肢体をほしいままにし、妖艶な笑みを浮かべる。

 ここは、魔女集会。多くの魔女たちが集う夜の宴だ。

「にしてもまあ、番を迎える魔女がいたとはね。千年ぶりじゃないかしら」

 その中の一人がぽつりと呟いた。

「しかもそれが『嘆きのテレーズ』だなんてね」

 揶揄うような声を口々に浴びても、当の本人は少しも動じなかった。いつものように黒髪を揺らしてテレーズは静かにそこにいる。

 同意をする声の中に、石を投げ込むように一人の魔女が言った。

「まあでも当然じゃない?」

 悠然と橙色の髪を指先で弄び、ひときわ艶然と微笑んでみせるたのは『魅了』を冠する者。

「だってジャックは昔から、テレーズのことしか見えてなかったもの」

 好意を操る者らしく、彼女は殊更男女の機微に殊更聡いところがあった。思えば、メリステリアは全てお見通しだったのかもしれない。

 すぐに話題はほかへと移り、魔女たちは次々に会話に花を咲かせていく。永遠に等しい時間を生きる彼女たちは、話が尽きなかった。

 やがて、夜も更けようかといった頃、また一つの影が浮かび上がった。
 それは長身の男の姿となる。黒衣を翻して、彼は恭しく礼をした。

「まあ、ジャックじゃないの」
 現れた男の姿に、一同は唖然とする。

「どうしてここが」

 魔女集会は本来、余人の立ち入りを許さないものだ。その質問に応えるように、テレーズの左手の指輪が青く輝いた。

 番はいついかなる時も繋がっている。居場所を知ることなど、造作もないことだと示すように。

 集まりの奥、上座に座る一人の魔女がゆったりと言った。

「久しぶりだねぇ、ジャック。昔はあんなに小さな小僧だったのに、私があくびをしている間にこんなに大きくなって」
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