悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「そうか。時間を取らせてすまなかった」
 「それより」

 すぐに引き下がり、出ていこうとする僕をロベリアの声が引き留める。

 「アイリスさん、だったかしら? 今どうしてるの?」

 脈絡のない名指しに、背筋がすっと冷えた。

 「……なぜ彼女を気にする?」
 「別に。さっきあそこにいたから、聞いてみただけ」

 肩を竦める仕草は、心底どうでもいいというように見えた。
 だが前回のことといい、僕にはどうしても彼女がアイリスにこだわっているように思えてならない。

 今回の件でイレーヌの天下は終わりを迎えるだろう。
 彼女の威光が陰ったのを、敵対していたロベリアがいち早く察知していたのだとしたら。
 ロベリアにとって次の脅威は、正妃最有力と言われていたアイリスだ。

 王妃の座を狙う者として、警戒する気持ちは分からなくもない。
 もしかすると、本当に今回の件はロベリアの策略なのか。
 イレーヌの暴走すら誘導の結果だとしたら。
 次の餌食はアイリスということになる。

 「彼女に何かしたら、許さないからな」

 考えがそこまで至って、僕は言葉を選ばず口にしていた。

 「――へぇ?」

 ロベリアの目がわずかに細くなる。
 形だけは笑顔なのに、底冷えするような気迫を感じてゾワリと肌が粟立った。

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