悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 洗濯所、食糧庫、医務室。下級女官の手伝いをしていると、高確率で遭遇する。
 つまりそれだけ多くの場所に、彼は人知れず目を配っているということだ。
 後宮以外にも任されている仕事がたくさんあるのに、少しも手を抜こうとしない彼のことを、私は尊敬していた。

 「先生はもうすぐ戻られると思います。よかったらおかけになってお待ちください」
 「ありがとう。邪魔するよ」

 椅子を進めると、彼は素直に腰を下ろしたあとで所在なさげにキョロキョロと室内を見回した。
 その様子がなんだか可愛らしくて、片付けを再開するフリで背を向けこっそり笑いをこぼす。

 彼が国王だったらどんなによかったか。
 女官相手でも気遣いを忘れず、揉め事を可能な限り回避し、皆が少しでも楽に息ができるよう動いてくれる人。
 それを恩に着せず、忙しさを盾にしない人。そんな人が治める国を、最近よく夢想してしまう。

 「ガーランド領はいいところだった?」
 「ええ。なにもない場所でしたが」

 殿下に出す紅茶を淹れながら頷く。

 のんびりとした田舎領。
 目立った特産品もなく、両親はいつも税収に頭を悩ませていた。
 裕福な貴族との結婚話がまとまりかけていたところで私の後宮入りが決まって、さぞがっかりしたことだろう。

 「……帰りたいよな」
 「わたくしは……」

 不意に落とされた問いに、即答できない自分に驚く。
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