悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「ふふ、いやですわ。そんな威厳のあるお姿、国王の他に誰がおられると?」

 怯むことなく、女は心底愉快そうに笑った。
 常ならば無礼者と怒鳴りつける場面だが、彼女に対してはこれっぽっちも腹が立たない。

 「……名は」

 対する余の声は、滑稽なほどに掠れていた。

 「ロベリアですわ。陛下」
 「ロベリア……」

 名を告げられた瞬間、聖典の一文を授けられたような心持ちで繰り返す。

 「どうか可愛がってくださいましね」

 ロベリアが手を差し伸べる。
 そのひんやりとした手を取った瞬間、あれほど心待ちにしていたはずのアイリスとの初夜のことなど、どうでもよくなってしまった。

 「……アイリスのお披露目は中止だ」
 「そんなっ、それではアイリス殿のお立場がっ」
 「黙れ!」

 言われるまでもない。分かっている。
 だがアイリスが後宮で笑いものになろうと、目の前の女の関心を得ることに比べれば些末なこと。

 「アイリス? だぁれ?」

 ロベリアが甘い声で聞いてくる。

 「おお、おお、お前は気にしなくてよい。立ち話もなんだ、応接室に茶を運ばせよう」

 他の女の名前を聞かされたら不愉快に決まっている。
 責めるような響きを感じて、慌てて取り繕った。

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