悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「ですが陛下……」

 なおも言い縋ってくる息子の声が鬱陶しくて仕方ない。
 即座に余の優先順位が変わったことも理解できない愚か者。本当に余の息子なのだろうか。

 「いいか、それ以上余計なことを言うのなら、お前を王宮から追放するぞ」

 声を低くして言うと、エミリオが泣きそうな顔で押し黙った。
 昔からこう言えば黙る男だ。王位継承権のない第二王子の立場の弱さを、よく理解している。

 「ふふ、王様ってワガママなのね」

 ロベリアがからかうように笑う。
 その笑顔が眩しくて、思わず目を細めた。
 不敬この上ない言葉も、彼女の美しい唇から紡がれると甘美な睦言に聞こえるから不思議だ。

 「行こう。馬車の移動は疲れただろう」
 「護衛の方は放っておいてよろしいの?」

 エミリオをチラリと見て、ロベリアが可愛い勘違いを口にする。
 だがわざわざ「あれは息子だ」と訂正してやる価値もない。

 「あれはただの伝令役だから気にするな」

 エミリオは目に見えて落ち込んだ様子だったがどうでもいい。
 これ以上ロベリアとのことに口を出す気なら、本気で追放してやろう。

 国王である余と、庶民の娘であるロベリア。
 生涯出会うはずのなかった二人が、示し合わせたようなタイミングで巡り合った。
 それが運命ではなくなんだというのか。

 この女と結ばれるためにこの国に王として生まれ落ちた。
 それは神の天啓を得たような確信だった。
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