【4/5書籍発売】悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「二人きりにもなるなと。ですのでお帰りいただけます?」
 「あんな奴の言うことを聞く必要など」
 「出て行かないのでしたら人を呼びます」

 腹立ちに任せて声を尖らせると、彼女はサッとテーブルに置かれた呼び鈴に手を伸ばした。

 その様子に違和感を覚える。
 もしやただの嫉妬心だけで言っているのではないのかもしれないと。

 会うのを禁じられる前の彼女なら、父上の存在など気にせずオレを受け入れてくれた。
 他の女の気配を察知しつつも、追い返すようなことは言わなかった。
 よく見ればいつもは余裕を滲ませているはずの笑みも、今は少し固い。

 父上だ。
 父上がロベリアに何か余計なことを吹き込んだ。
 触れさせるなと命じたあとで、きっと逆らえばひどい罰を与えると脅した。
 ロベリアはそれに怯えているのだ。

 いくら無能といえど、国王の肩書は絶対だ。
 あの男がロベリアに罰を与えようとすれば、なんの証拠もなく処刑もできてしまう。
 それが分かっているからこそ、ロベリアは素直に再会を喜べずにいるのだ。

 そんなことはさせない、安心しろと言ってやりたかったが、聡い彼女相手に軽率な発言はできない。
 ただでさえロベリアは今、イレーヌの嘘のせいで危うい立場にいる。
 謀反の疑いなど、あるわけがないのに。
 前々からロベリアの存在を疎ましく思っているルキウスがここぞとばかりに彼女の出自や交友関係を調べ直しているのだ。

 ルキウスにはそれとなく調査を止めるよう進言しているが、「ロエル殿下を篭絡するほどの女ですので」とオレたちの関係をすでに見抜いた上で、手を緩める気はないと宣言されてしまった。

 もちろん嫉妬に狂った女の捏造に、証拠などなにも見つからないだろう。
 だが一方的な恋慕ではなく、すでにオレたちの想いが通じ合っているのを父上が知ったら。

 怒りに我を忘れ、捏造された罪状を盾にロベリア諸共オレを処刑する可能性を、完全には否定できない。

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