悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 そう考えたとき、我が国セルトラヴィアの建国史が稲妻のように閃いた。
 初代国王は神の導きによりこの地を訪れ、好き勝手に生きていた蛮族たちを統治し、囚われの姫君たちを救い出した。その中の一人と愛し合い、共にこの国の基礎を作ったのだという。

 子供の頃、祭祀で司祭が説諭するのを何度も聴いた。

 もしやあれはただの昔話ではなく、王家に伝わる使命なのではないか。
 蛮族を倒せ。囚われの姫を救い王となれ。

 姫はロベリアだ。
 王となるべきオレが倒す蛮族は誰か。答えは一人しかない。

 「待っていろロベリア。必ず救い出して見せる」

 視線が絡み合う。
 ロベリアの目が『行け』と言っている。

 突き動かされるように踵を返した。
 彼女は何も言わない。ドアに手をかけるオレを止めもしない。

 沈黙は期待だ。
 オレが正しい道を選ぶか、自分に相応しいか、見極めている。

 強い決意を感じる、引き結ばれた口元。
 試している。試されている。ならば、応えねば。

 父上を退ければすべてが動く。
 監視は消え、後宮の扉は開かれる。
 束縛から逃れられたロベリアはオレへの愛を隠す必要がなくなり、泣いて喜ぶだろう。
 ルキウスはオレを褒め称え、エミリオは跪き従う。国民は「若き王の英断」に酔いしれる。

 反逆ではない。
 刷新だ。浄化だ。王家のため、国のため、そして彼女のため。

 神が味方をしている。正義は我にあり、だ。

 扉を閉め、歩き出す。
 ロベリアに会えない間のイラ立ちも、焦燥も、すでに綺麗に消え去っていた。
 廊下の冷気が肺に落ちる。

 深く息を吸えば、頭が冴え冴えと澄み渡っていった。
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