悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~

▽イレーヌ・カリスティア①

▽イレーヌ・カリスティア①


 胸の奥に、小さな炎がずっと燃えている。

 「あっ……」

 廊下の向こうからやってきたリュシーが、わたくしに気づいた途端に小さく声を上げた。
 気まずそうに目を逸らし、無言のまま脇を通り過ぎていく。

 「フン」

 すれ違いざま、聞こえるように鼻を鳴らす。
 リュシーはわずかに肩を跳ねさせたが、結局は何も言わず小走りに去っていった。

 ヴェロニカたちと罵り合ったあの日から、わたくしをもてはやしていた女官たちは露骨に距離を置くようになった。
 談話室で鉢合わせても、誰一人として謝りもしない。
 諸悪の根源であるヴェロニカなど、あからさまに嫌そうに顔をしかめた。
 挙句共におしゃべりに興じていた女官たちを引き連れ、「あちらへ行きましょう」とその場を離れていく始末。

 陛下に名前も覚えていただけないような烏合の衆をまとめて、わたくしになり替わったつもりらしい。
 高位貴族に逆らい、顔に消えない傷をつけた女のくせに。
 後宮を追い出されないで済んでいるのが、わたくしの温情ゆえだとどうして分からないのか。

 今日もわたくしの談話室で、わたくしの席に陣取りふんぞり返っている。

 「いい気なものね」
 「ハッ、一体どちらがかしらね?」

 見下げ果てた女だと言外に告げても、堪えた様子もなく生意気に言い返してくる。
 その後ろでリュシーたちがコソコソと「すごい!」だの「強くて素敵!」だのと囁き合っていた。
 そんなことだからヴェロニカがますます調子に乗るのだ。
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