悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 まったく、誰も彼も気に食わない。
 少し前までは、わたくしに媚びてほんの少しのおこぼれを拾い集めていたくせに。

 下位貴族がいくら寄り集まったって、所詮公爵家に勝てるわけもない。

 「いちいち難癖つけるのやめていただけ――」

 睨み合っているところにドアが開いて、ヴェロニカがそちらに注意を向けた。
 つられてそちらを見ると、そこにはアイリスが立っていた。

 ずいぶん前にこちらの談話室から追い出して以来、彼女はここには立ち入らないようにしていたはずだけど。
 そう思いながら視線を下に移すと、彼女の手には雑巾の入ったバケツがぶら下がっていた。

 「あら、あなたまた下級女官の真似事をしていたの?」

 すかさずヴェロニカが呆れ顔をする。

 陛下に初夜をすっぽかされてから、アイリスは自ら進んで下級女官と同じ汚れ仕事をするようになった。
 正直貧乏ったらしくて見ていられないのだけど、自分がみじめすぎておかしくなってしまったのだろう。

 「真似事ではなくお手伝いだってば」

 アイリスが困ったように笑う。
 意外にも、その表情や口調に卑屈さはない。

 「ホント変な人。暇つぶしにしてももっと他にあるでしょう」
 「ヴェロニカもやってみたらどう? 身体を動かすのって案外気持ちいいわよ」
 「うえっ、絶対いやよ。お断りします」

 それどころか、ヴェロニカの嫌味にも楽しそうに言い返している。
 前は曖昧に微笑んでそそくさと逃げ出していたというのに。

 ヴェロニカ自身も、少し前までの陰湿な言い方ではなく、言っている内容は変わらないのにどこかカラッとした口調だ。
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