悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「ねぇ、そんなことより新色のリップを見てほしいんだけどさ」
 「ここのお掃除が終わってからでもいいなら」

 それきりわたくしへの興味が失せたとでもいうように、ヴェロニカは取り巻きを連れてアイリスと行ってしまう。

 別の上級女官とその取り巻きたちが、その場に取り残されたわたくしをチラチラと伺いながら小さな声で何事かを話しているのが見えた。
 嘲笑の気配はないが、まるで腫れ物に触るかのような張り詰めた空気だ。
 その雰囲気が苛立たしくて、空いた席に座ることなく無言で談話室を出た。

 別に、あんな場所でなくたってくつろげる。
 何せ個室を与えられているのだ。足の引っ張り合いばかりの醜い女官たちの中に、わざわざ出向いてやる必要はない。

 「品性下劣な方ばかり!」

 むしゃくしゃしながら、辿り着いた自室のドアを乱暴に閉める。

 それにしてもヴェロニカは一体どういうつもりなのか。
 よりにもよって、つい先日まで目の敵にしていたアイリスに懐くなんて。
 あんな上級のなりそこないに取り入ったって、なんの得もないのに。

 勝ち目がないと悟って開き直って勝負を投げたのだ。顔に傷のある女など、どう足掻いても陛下に愛されることなどないから。
 見放された者同士、傷の舐め合いをしているだけ。
 生産性もない、向上心のかけらもない、無意味なお友達ごっこ。

 馴れ合って徒党を組んだところで、陛下の寵愛などもらえるわけもないのが分からないのか。
 どうせわたくしに対する嫌がらせだろう。愚かな女だ。もうアイリスのことなど、歯牙にもかけていないというのに。

 「無駄なことを!」

 言いようのない衝動に駆られ、クッションを掴んで思いきりベッドに投げつける。
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