悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~

▽エミリオ・ラスセルト

▽エミリオ・ラスセルト


 「ではよろしく頼む」
 「ええ、お任せくださいエミリオ殿下」

 中級女官の一人に伝言を頼み、その場を離れる。
 視界の端で、女官数人が固まってこちらをチラチラ見て嬉しげに何事かを囁き合っているのが見えた。
 話しかけられると面倒だ。目を伏せ、足早に廊下を歩く。

 父から管理を任されたこの後宮は、何年経っても居心地が悪い。
 甘ったるい香りと、権力のおこぼれを狙うハイエナの目つき。
 大した権力を持たない第二王子の僕ごときに擦り寄ったって得はないのに、父に飽きられた女官たちは、少しでも後宮での地位を向上させたくて躍起になっている。

 人目から逃れられたことを確認して足を止めた。

 「アイリス……」

 唯一自分に色目を使わない女官の名を呟いて、虚しい気持ちになる。

 彼女は今日、半年の教育期間後に初夜を経て、上級女官に昇格するはずだった。
 なのに、父の気まぐれで反故になってしまった。
 国王陛下の寵愛を得るはずだった寝所で、別の女官から伝言を聞いて彼女は何を思うのか。

 だが父のことだ。
 あの新人女官と多少話をしたら満足して、明日の夜には改めてアイリスの元に行くに違いない。
 所詮、礼儀もマナーもなってない庶民の娘だ。目の肥えた父を楽しませられるのは一瞬のこと。

 そう考えてまた少し虚しくなる。

 他の女官たちとは適度な距離を保っているし、アイリスに対しても平等に接している。
 誰が父の手付きになろうと、気にも留めなかったのに。
 どうして彼女のことは気に掛かってしまうのだろう。
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