【4/5書籍発売】悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 ロエル殿下は物事に執着しない方だ。
 陛下のために集められた女官たちを、まるで使い捨てのおもちゃのように見ている。
 そんなこと、彼が初めてこの部屋に忍び込んだ時から見抜いていた。

 その上でわたくしから誘ったのだ。
 そうやって選ぶ立場だった殿下が、わたくしの手の上で転がされ、夢中になっていくのが面白かった。

 ロエル殿下など、王妃になれなかった時のための保険でしかない。
 色香に惑わされ、陛下への口添えを頼めればなおいい。
 それだけだったはずなのに。

 「イ、イレーヌ様、片付けが終わりましたので失礼いたしますっ」

 ぎこちなく礼をして、逃げるように女官が去っていく。
 一人になると愉快な気持ちは途端にしぼんで、代わりに虚しさがこみ上げてきた。

 あの頃、確かに殿下の心はわたくしのもとにあったはずなのに。
 ここ最近、急速に離れていってしまうのを感じていた。

 アイリスの出現で、一度そちらに興味が向いたのは気づいていた。
 だけど陛下にすっぽかされたと聞いてからは、まるで存在すら忘れたように無関心になった。
 殿下はそういう方だ。陛下のお気に入りを、裏でこっそりいいようにするのが好きでたまらないだけ。

 だからそう、わたくしの本当の敵は、陛下に見捨てられたアイリスでも、後宮でのわたくしの座を狙っていたヴェロニカでもない。
 陛下が通い詰めていると聞いた時。
 いいえ、個室を与えたと聞いた時。
 それも違う。
 たぶん初めて顔を合わせたあの瞬間から。

 あの女が、わたくしの美しい世界を壊してしまうのではという予感があった。

 「ロベリア……!」
 憎悪の滲む声で呟く。

< 122 / 206 >

この作品をシェア

pagetop