悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「ない……ここにもないわ……一体どこなの……?」

 浴室から移動して中級専用の浴室を。衣装室を。そして一階の談話室。それから洗濯室。次は食堂。地下の厨房。倉庫。
 あちこちをひっくり返して、ロベリアと隣国の貴族との秘密の連絡手段を探す。
 爪が割れて血が滲み始めたが、構ってなどいられなかった。

 微かに足音が聞こえた気がして、慌てて物陰に隠れる。
 悪いことをしているわけではないのだから堂々としていればいいのだけど、できなかった。
 このところのわたくしに向けられる女官たちの視線を思い出すと、心臓が嫌な音を立てて軋むのだ。

 しばらく待ったのち、そろりと足を踏み出し捜査を再開させる。
 まるでこちらが工作員をしている気分だ。

 ロエル殿下はきっと、国のために一人孤独に戦ったわたくしを認め、抱きしめてくれる。
 あんな女に騙されてどうかしていた、やはりオレにはおまえしかいないのだ、と。
 そのシーンを想像すると、胸の奥からこみ上げるような幸福を感じた。

 「ふ、ふふ……あははっ」

 ここ最近の鬱々とした気分が晴れていく気がして、声を押さえる気にはなれなかった。

 そうだ、こんな泥棒のような真似事を、未来の王妃がする必要はない。
 直接問い詰めればいいのだ。あの女の部屋に行って。証拠はその部屋にあるに決まっているのだから。

 ああどうして気づかなかったのかしら。
 拒否されても構わない。やましいところがないのなら素直に従えるはずと言えば、唇を噛んで黙るしかないのだ。

 探索の手を止め立ち上がる。
< 129 / 206 >

この作品をシェア

pagetop