【4/5書籍発売】悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 引き出しや棚から床に広げた書類や小物入れたちをそのままに、なんのための場所かも分からない地下の小部屋を出て階段を上っていく。

 一歩進むごとに、まるで明るい未来に向かっていくような高揚感があった。

 階段を上りきって、長い廊下の角を曲がったとき。
 信じられないものを目にして足が止まる。

 ロベリアの部屋の扉が静かに開き、そこからロエル殿下が現れたのだ。

 一瞬、頭が真っ白になり、次の瞬間にはそのすべてが黒で塗りつぶされた。
 憤怒の感情が全身を支配する。息もできないほどの怒りだ。

 殿下はわたくしに気づくこともなく、廊下の向こうに消えていった。

 ブルブル震える手で夜着の裾を掴み、駆け出す。
 殿下の元へではない。
 後宮への出入りを禁じられ、監視の目も厳しくなったというあの人を、わざわざ呼びつけ危険を冒させたあの女。
 この国を腐らせていく毒婦ロベリアに、制裁を与えてやらなければ気が済まなかった。

 勢いに任せてドアを開け放つ。

 「どういうつもりなの⁉」
 「変わったご挨拶ですわね、イレーヌさま」

 ロベリアは長椅子に腰かけ、少しも驚かずこちらを見た。
 薄く口角が上がっている。
 いつもの腹立たしい余裕顔。火に油を注ぎたいらしい。

 殿下が出て行ってすぐわたくしが現れたのだ。
 何を言いたいかなど、分かっているくせに。

 「――この、泥棒猫が」

 呪詛のようなしわがれ声。それがわたくしの口から発せられたものだと、気づいたときにはもう止まらなくなっていた。
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