【4/5書籍発売】悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「王族を惑わす売国奴め! お前の悪辣な魂胆などお見通しよ! 恥を知りなさい!」

 最大の侮辱に、ロベリアは眉一つ動かさない。
 冷ややかな眼差しだけが、こちらを測るように細められた。

 「ねぇ、落ち着いたら? 夜中に大声を出したらみんな驚いてしまうわ」
 「黙りなさい!」

 諭すような声が余計に神経を波立たせる。

 「まあ大変、指先から血が」

 わたくしの叱責が聞こえなかったとでもいうように、わざとらしく心配そうに眉根を寄せてロベリアが言う。
 反射的に視線を追うと、握り締めていた白い夜着の裾に、べったりと血が滲んでいた。

 「もしかして……またどなたかの弱みを捏造なさっていた、とか?」

 クスクスと笑う。
 揶揄を含んだ、癇に障る声だ。

 確かに今まで追い出してきた女官には、罪をでっち上げたこともある。
 だけどそれも今思えばすべて、これから起こすであろう罪をわたくしの鋭い勘が嗅ぎ取って、未然に防ぐよう無意識に動いていただけのこと。

 そう、今のロベリアのように。

 「――だとして、身から出た錆ではなくて?」

 お前の好きなようにはさせない。
 言外にその意を込めて睨みつける。

 証拠はまだだが、疑うものがここにいると知って少しは焦ればいい。

 「お前が何を企んでいるかなんて、とっくに見抜いているわ。覚悟なさい。ロエル殿下を誑かした罪は重いわ」

 言い訳などさせない。
 罪はいずれ暴かれる。
 目を逸らさぬまま、死刑を告げる宣告官の厳しさで追及する。

 「あはっ」

 けれどロベリアは、事の重大さを分かっていない呑気な頭で小さく噴き出した。
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