悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 反射的に足を踏み出す。
 けれど遅かった。
 イレーヌはすでに動き出していて、さっきまでの危なげな足取りとは一転、廊下を踏み抜く勢いで走り出した。

 迷いなく向かうその部屋が誰のものか、知らないはずなのに分かった。
 ロベリアだ。
 嫌な予感がして、私も走る。

 金切り声が聞こえた。
 イレーヌの感情的な声だ。
 対するロベリアの声は落ち着いていて、よく聞こえない。
 癇癪を起した子供をなだめるような、余裕を感じる声。

 意味もなく焦っているのは私だけで、ちょっとした言い合いなのかもしれない。

 少しホッとして足が緩む。

 開いた扉からは明かりが漏れていた。
 ロベリアも起きていたのだろう。もしかしたら最初からイレーヌと約束があったのかもしれない。
 だけど。

 「これは天罰よ」

 中に入った瞬間、イレーヌが真鍮の燭台を両手で振り上げるのが見えて頭のてっぺんからザッと血の気が引く。
 ソファに座るロベリアに向かって踏み込んでいくのが見えた。
< 136 / 206 >

この作品をシェア

pagetop