悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 考えるより先に身体が動いた。イレーヌに体当たりする。

 「ぎゃあっ!」

 イレーヌは悲鳴を上げて床に倒れ、燭台が手から離れて転がった。

 「ごめんなさい、イレーヌ様、お怪我は――」
 「邪魔をするな!」

 獣のような声だ。
 足が竦む。

 イレーヌはすぐに起き上がり、床に転がった燭台を拾い上げた。
 私の存在を無視して、憎悪の滲む顔でロベリアを睨みつけた。突き倒されても殺意は失われていない。

 さすがのロベリアもイレーヌの乱心に驚いたのか、呆然とするばかりだ。

 「い、イレーヌ様! 落ち着いてください!」

 必死に呼びかけるが、反応はない。

 「ロベリアさんも逃げて!」
 「どうして、あなたが……?」
 「今そんなこと言ってる場合ですか!」

 状況が呑み込めていない様子で呆然とこちらを見ているロベリアに檄を飛ばす。
 きっと気が動転しているのだ。
 とにかく少しでもロベリアから気を逸らさなければ。

 「こんなことをしては……陛、……いえっ、ロエル殿下が悲しみます!」

 イレーヌがロエルに執着しているのは気づいていた。
 王妃になるのはわたくしと傲然と笑うその美しい顔が、殿下の名を聞くたび揺らぐから。

 「――あなたもロエル殿下を誑かしているのね」

 狙い通り、いや狙った以上に。イレーヌはその言葉に反応した。
 視線がロベリアから私に移る。
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