悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「部屋が荒らされていた件はどう見る」
 「それは……分かりません。私が見たのは、あくまでも荒らされた後なので」

 この状況ではどうしてもイレーヌが疑わしく思える。
 だが彼女は憶測だけで物を言うような軽率な人ではない。こんな時だというのに、それが少し嬉しかった。

 「参考にさせてもらおう……しかし分からないな。どうして自分が怪我をしてまで彼女を助けたんだい?」

 仕事としての質問はここで終わりにして、口調を和らげて問う。
 異常事態を察知してイレーヌの後を追うのは分かる。
 ライバルと目されている女官の部屋に入っていくのを見ておかしいと思うのも。

 だがその後の行動があまりアイリスらしくない。
 実際、部屋が荒らされているのに気づいた後は自分で調べるのではなく守衛に伝えたし、ヴェロニカたちとの諍いも、騒動の収束自体は自分の力ではなく僕たちを呼ぶに留めた。
 自分が止めに入ったのでは、余計にこじれるだけだと理解しているのだ。

 彼女は賢い。
 その場を収めるのに必要な人物を見極め、すぐに動くことができる。
 なのに今回は、近くに調査の兵士がいるのを知っていながら、自らが飛び込んだ。

 「申し訳ありません……ただ、どうしてだか放っておけなくて」
 「ああ責めているわけでは」

 困ったような顔でどんどんうつむいていってしまうアイリスに慌てる。

 「確かロベリアとはほとんど面識もないと言っていただろう。だから少し不思議だっただけで」
 「その、はず、だったんですけど……」

 煮え切らない態度だ。
 自分でも理解できない行動だったらしい。
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