悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「まさか貴様っ……!」

 護衛を手に掛けたのか。
 そう言おうとした瞬間、ロエルの影がひらりと動いた。

 腹部に衝撃が走る。
 熱い。
 遅れて痛みを感じる。
 息が詰まった。

 「な、にをーー」
 「気づいたんだ。お前のせいでロベリアと一緒になれないと」

 何が起きたか理解できず戸惑う余に、ロエルが妙に晴れやかな声で言う。

 いつの間にこんなに距離を詰められたのだろう。
 ロエルはベッドに乗り上げ、至近距離にまで迫っていた。

 ここまで近づけば流石に表情も見える。ロエルは笑っていた。
 焦点の合わない目を見て、正気じゃないことはすぐに分かった。
 頬が黒く汚れている。
 いや黒ではない。赤い液体だ。

 「オレとロベリアのために、死んでください父上」

 それが血だと気づいた時、ロエルが耳元で囁くように言った。

 「や、やめよ無礼者!」

 息子だったはずのものが、唐突に別の生き物に見えて思い切り突き飛ばす。
 不意をつかれたのか、ロエルが仰け反るようにベッドから転がり落ちた。

 逃げなければ。

 「うぐっ」

 慌てて立ちあがろうとして、腹部の激痛で体勢が崩れる。
 確かめるように腹に触れると、ぬるりとした感触があった。
 混乱して視線を泳がせると、ベッドの上には血濡れた長剣が転がっていた。
< 150 / 206 >

この作品をシェア

pagetop