悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「ひっ、ヒィッ!」

 喉の奥から甲高い声が漏れる。

 ロエルは本気だ。
 気づいた瞬間、痛みも忘れてベッドから飛び降りた。

 幸いロエルは床で頭を打ったようで、脳震盪を起こしたのかうめきながら床を這い回っている。

 振り返らず走る。
 足に力は入らなかったが、このままここにいて殺されるのを待つわけにはいかない。
 開いたままの扉を潜り抜けようとしたところで、ぬかるみに足を取られ転んでしまった。

 なぜこんなところに水が、という憤りは、それが護衛から流れ出た血溜まりであると理解した瞬間に霧散した。

 「ひえぇっ!」

 悲鳴を上げながら逃げ出す。
 殺される。死にたくない。
 逃げなければ。でもどこへ?

 考えがまとまらないままヨタヨタ走る。
 助けは来ない。皆ロエルに殺されてしまったのだろうか。だとしたらもうおしまいだ。

 どこに逃げても無駄なら。

 混乱した思考に一筋の光が射す。
 どうせ死ぬなら、愛しい女のもとで。
 それは救いのようなひらめきだった。

 死ぬなら、彼女の香りのそばがいい。
 彼女の姿を目に焼き付けて、彼女の手でまぶたを下ろしてほしい。
 そう思えば足が動いた。

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