悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 そうだ、最初から我慢などせずロベリアと共に夜を過ごしていれば。
 こんなふうに狂った息子に刺されることなどなかったのに。
 ルキウスなんぞの言い分を律儀に守ったばかりに最悪の事態を招いた。
 あやつが死ねばよかったのに。
 余より価値のないものが、余の身代わりになるべきだ。

 足が重い。視界が狭くなっていく。
 血が大量に失われているのだろう。耐え難い寒さが襲ってくる。
 だが足を止めることはできない。いつロエルが追いついてトドメを刺しにくるか分からなかった。

 離宮に続く廊下はこんなに長かっただろうか。
 気の遠くなるような距離に挫けそうになった時、ようやく離宮の入り口が見えてホッとする。

 そうだ、あそこには守衛室がある。
 ロエルが近づかないよう、一人だった常駐人数を増やした。
 この姿を見たら、すぐにでもロエルを殺しに行くはず。

 応急処置は最低限でいい。
 早くロベリアに会わせろと命じれば、きっと担いででも連れて行ってくれるだろう。

 「おおい……誰ぞ、おらんか……」

 だがなぜだろう。
 絶え絶えの息で呼びかけても、守衛室からは誰も出てくる気配がない。

 まさかロエルはここの人間たちにまで手を下したのだろうか。
 血まみれの室内を想像してゾッとする。
 吐き気が込み上げて、その場を離れた。

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