悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 重い身体を引き摺るようにしてロベリアの部屋へ向かう。
 嫌な予感が頭の中を支配していた。

 もしロエルが、ロベリアに焦がれているのに自分のものにできず絶望していたのなら。
 実の父親を、神に選ばれた国王を、弑すほどに狂っているのなら。
 他の男のものになるくらいなら、最愛の女を殺して手に入れようと考えても不思議ではない。

 「ならん……それだけはならん……ロベリアは余のモノだ……!」

 ロエルへの憎しみでなんとか力を振り絞る。ロベリアの部屋はもうすぐそこだった。
 廊下をよろめきながら進む。見回りの足音はない。
 夜具の裾が血で重い。一歩進むたび息が弾む。頭が痛い。脚がもういうことを聞いてくれない。

 だが辿り着いた。
 見慣れた扉。ノックをする余力はない。取っ手に体重をかけて押す。鍵はかかっていなかった。

 祈るような気持ちでドアを開ける。
 果たしてそこにいたのは。

 ああ、ロベリアだ。
 生きている。ソファに座り、待ち構えていたかのように。

 雲の切れ間から光が差し込む。
 月明かりに照らされ、より美しさを増したロベリアは、どこか茫洋とした目で余を見つめていた。

 「おお、女神よ……」

 初めて見るその人間味の薄い表情は神秘的で、体温の下がり切った身体に熱が戻っていくかのようだった。

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