悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
 「ロベリア……愛している……」

 ようやく辿り着いた喜びで全身の力が抜け、彼女の膝に崩れ落ちる。
 服の上からでも彼女の体温が伝わり、冷え切った余の体をそっと温めた。

 「余の身体はもう保たぬ……共に死のうロベリア……どうか、愛に殉じる余の魂を連れていっておくれ……」

 余を失ったこの国はいずれ滅びるだろう。
 だがそれがなんだというのか。余とロベリアが結ばれることに比べれば、全てが瑣末ごとに過ぎぬ。

 「くく……皆滅びてしまえ。余に嫉妬し、余を害そうとする者ばかりのこの世界など」

 痛みはもうない。
 おかしさが込み上げてくる。余を縛るものはもう何もないのだ。

 そっと、髪にロベリアの手が触れる。

 きっと褒めてもらえる。
 慈しむように撫でてもらえる。よく頑張ったと、さすがあたしの選んだ人ねと。
 そっと愛を囁き、その胸に抱きしめてもらえる。
 期待に胸が膨らんだ。

 「……最後まで愚かな人」

 くしゃりと、細い指が余の髪をつかむ。低い声だった。冷たい声だった。

 「ロベ、リア……?」

 なけなしの力を振り絞って、ぎこちなく顔を上げる。

 「あなたのことなんて、一度だって愛したことはない」

 意味が分からない。
 何と言った。
 聞き間違いだ。

 息が吸えない。
 胸が痛い。
 腹の痛みが遠のく。
 音が遠い。
 月明かりが滲む。

 意識が途切れる直前に見えたのは。

 痛みを堪えるような、泣き出す寸前の子供のような。

 女神とは程遠い、人間そのもののロベリアの顔だった。
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