悪女ロベリアの矜持 ~欲にまみれた王族の皆様。〝ただの側室〟に翻弄される気分はいかがですか?~
最終章

▽ロベリア・ガーランド:一度目①

▽ロベリア・ガーランド:一度目①


 「君の処刑日が決まった」

 湿った石の匂いの中、無気力に横たわったまま、首だけを動かして声の方を見る。
 鉄格子の向こうで松明が揺れ、影が私に向かって伸びた。

 ルキウスと名乗った男が、痛ましいものを見る目で私を見下ろしていた。

 「二日後の正午だ。明日は柔らかいパンと温かいスープが飲めるように牢番に指示した……だができるのはそれだけだ」

 悔やむように言い、私の視線に合わせるように屈み込む。

 「王は翻意しない。裁判のやり直しも退けられた。王直轄の特別審理ゆえ、手出しもできない。私にできることは、ここまでだ」

 すまない、と辛そうに顔を歪めながら、汚れた床に彼は躊躇なく膝をつく。

 起き上がる力はもうない。
 何日もまともな食事を与えられず、冷たい石床の上ではロクに眠ることもできていない。
 毎日のように浴びせられる牢番の罵倒も相まって、精神はもう限界だった。

 「おねえ……さまは……」

 ようやく絞り出した声はひどく掠れていて、彼の耳に届いたのかも分からない。
 それでも、ルキウスの顔には同情と悔恨が滲む。

 どうして国王の補佐役の彼が罪人の私に、と今も不思議に思う。

 「姉君のことは心から申し訳なく思っている」

 思いがけず誠実な声に、枯れ果てたと思っていた涙がまたこみ上げる。

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